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親の土地に子どもが家を建てる前に考えておきたいこと

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「何か考えておくことがあるの?」と疑問を抱かれるかもしれませんが、実はいくつか注意点がございます。ご参考までに、先日実際にあったケースを紹介させて頂きます。(一部事実関係を変更しております。)

 Aさん(49歳)は自分の父親(78歳)が所有する土地にハウスメーカーで自宅を新築することにしました。その土地に建築しようと決めた理由は、いずれその土地を父親から相続すること、またAさんの予算範囲内で建築しようとすると土地購入資金まで捻出することが難しかったことが挙げられました。建築地があれば、ハウスメーカーとの話はトントン拍子に進みます。すぐにプランが出来上がり、建築確認申請が認められました。当初は建築費を全額自己資金で支払う予定でしたが、奥様の希望どおりの家を建てようとするとコストが上がり、自身の退職後の老後資金が心配になったこともあって、また昨今の低金利情勢、住宅ローン控除の利用を勧められたこともあり、住宅ローンを組むことにしました。銀行での融資承認がおり、新築工事が着工されました。Aさんはこの段階で司法書士に新しい建物の名義の件で相談に来られたのですが、ここで初めて重大な問題があることに気付きました。

 それは何かと申し上げますと、銀行で住宅ローンを組むには土地を担保に提供するための契約を締結する必要があります。土地所有者はAさんの父親ですから、父親がこの契約をすることになります。ところが父親は数年前から認知症に罹患し、自分の名前も言えない状態でした。こういった状態では自分の行為の結果を適切に判断できる精神的能力(意思能力)がないと判断され、契約を締結することが出来ません。契約書にサインをしたとしても無効になります。そうすると銀行は住宅ローンの融資をしてくれませんので、Aさんも例外なく融資を断られました。他の銀行にも当たりましたが答えは同じでした。

 たちまちAさんは工事費用の支払いの目処が立たない状態になりました。もしこういったことを事前に把握していれば、成年後見制度の利用をしたり、別の方法を考えたりすることが出来たはずです。親の土地に子供が家を建てるという一見どこにでもあるような話ですが、実は法律上の問題を含んでいる恐れがあります。特に不動産が関係するとその傾向が顕著です。

 Aさんの問題がその後どうなったかと申しますと、Aさんは工事内容を縮小する変更をし、老後資金を一部取り崩して自己資金のみで支払いを完了させました。新築後、お家にお邪魔させて頂いた折、「最初から司法書士さんに相談するべきだったな。」と悔やんでおられました。

 このケースでは全額を自己資金で工面することが出来たのが幸いしましたが、そうでなかった場合、ハウスメーカーから損害賠償を求められる可能性もありましたので注意が必要です。

(司法書士 桑田直樹/神戸事務所)
L&P司法書士法人