NEWS

ニュース

2018.6.23

高齢者の認知症対策

こんにちは。司法書士の桑田です。

 神戸市長の久元喜造氏が寄稿する神戸市広報誌に載っていましたが(※1)、市長のお母様が認知症になられているそうです。また、認知症研究の第一人者で認知症検査の「長谷川式簡易知能評価スケール」を作られた長谷川和夫医師が先日、自らの認知症発症を公表されました。
 今や65歳以上に占める認知症・軽度認知障害(※2)の割合は4人に1人と言われています。ご夫婦それぞれに65歳以上の両親がおられると、その内誰か1人は認知症になる可能性があるということになり、非常に身近な病気と言えます。

 ところで、認知症になるということは以下のような法的な「財産凍結」リスクがあります。「財産凍結」とは、認知症による判断能力低下・喪失により自らの意思で契約締結など財産に関する法律行為ができなくなることを指します。
 例1)本人名義の預金の払い戻しができない。
 例2)本人名義の自宅を売却し介護施設に入る資金に充てようとしても不動産の売買契約ができない。
 例3)母親が認知症を患っている中、父親が他界した。父親の遺産に関する遺産分割協議に母親が参加できず協議が成立しない。このため父親の遺産が凍結状態に陥ってしまう。

 本人名義の財産(例1、2)や母親の相続権(例3)はあくまで本人や母親のものですので、家族といえども勝手に処分や行使をすることはできません。いったん凍結されてしまうと判断能力が回復するか、本人や母親の死亡により次世代が相続するまで法的な行為は一切何もできません。現代の医学では認知症の症状の進行を抑える薬はあっても根治薬はまだありませんし、相続は何年先か分かりません。よって、相続が開始するまでの間、ずっとこのような凍結状態が続いてしまいます。

 このような事態を避けるためには判断能力がある「今」のうちに任意後見契約や家族信託等の財産凍結回避対策であらかじめ「備え」をしておくことが重要です。財産凍結により他の家族や大切な人に迷惑をかけないためです。

 残念ながら、こういったケースでお困りの方の相談を昨今非常に多く頂いておりますが、何らの対策を取られていない場合は、家庭裁判所に申し立てをして成年後見等の法定後見で対応するしかありません。法定後見で財産凍結に対応する場合は、家庭裁判所の保守的、消極的資産運用やランニングコスト(後見人への報酬)を覚悟しなければなりません。
 なお遺言書も同様、判断能力があるうちでないと書けませんので、準備はお早めにされることをお勧めします。

(司法書士 桑田直樹/神戸事務所所長)



(※1 神戸市広報誌2018年5月号「久元市長の神戸を想う」より抜粋)
 「金庫に何億いう金が・・・」
 元気だった母も晩年になるといつしか現実と幻想の間を往き来するようになりました。ある日入所していた施設を訪ねると空っぽの冷蔵庫を指差して言いました。
 「あそこに金庫があるやろ。あの金庫の中に何億いう金が入っとんねん。あの金全部喜造にやるわ」
 母の性格と性癖を受け継いでいる私もいつしか母のような症状を呈するようになるかもしれません。(以下略)

(※2 軽度認知障害)
 認知症はある日突然発症するわけではなく徐々に進行していきます。このためまだ認知症にはなっていなくても年齢相応の認知機能レベルより低下している時期があります。こうした健常と認知症の境目にいる段階を軽度認知障害といいます。このうち認知症に移行する割合は年間約10%、5年後には約50%と言われています。特にアルツハイマー型認知症で顕著に見られ、軽度認知障害の早期の段階から治療薬やワクチン療法等の医師の適切な治療を受けることが必要です。
L&P司法書士法人