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『遺言書』 ただ書けば安心、というわけではありません

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昨今、よくニュースにもなっていますが、遺言書が静かなブームを迎えているそうです。書店に足を運んでも、遺言書やエンディングノート関連の本がたくさん出版されています。そうしたブームを受けてか、遺言書をどのように書いたらいいのか相談される方が非常に増えたと感じています。多くの方に関心を持って頂けることは、司法書士として遺言の手続きに関与させて頂いている私としても、非常に嬉しく思っています。ところで、そういった遺言書に関するご相談を受けた際、私が相談者の方にいつもお伺いしていることがあります。

 「遺言書を残されてご自身が亡くなって、その後さらに20年、30年先のことまで考えておられますか?」

 特に不動産をお持ちの方には必ず伺っています。例えば相続人が長男と次男の息子2人兄弟で、遺産相続で波風立たないように、ケンカしないようにと考えて、遺言書により実家の名義を息子2人の共同名義に変えたとします。その後実家に住むのは長男で、次男は別の所に住んでいるという、巷でよくあるケースです。しばらくはそれで何も問題は起こらないでしょう。実家に住まない次男にとっての問題も、固定資産税を負担するかどうかということくらいです。ところが20年、30年もすると、実家の修繕、リフォーム、建て替え、売却や賃貸の話が出てきます。1人の名義、つまり長男のみの名義であればご自身だけで決定し、工事や売却を進めることができますが、2人の共同名義だと次男の承諾が必ず求められます。ところがここで次男が、「建て替えには反対だ」とか「実家を売るなんてとんでもない」と言い出すと、この時になってよく兄弟ゲンカになるのです。遺産の分け方の問題を先送りにしたツケがここに回ってきます。この段階で名義を長男だけに変更できればよいのですが、名義変更には次男の同意が必須です。また名義変更には様々なコスト(不動産取得税、登記費用、場合によっては贈与税など)もかかります。

 また少し違った視点で見ると、20年、30年先はこの兄弟もそれなりの年齢に達しています。彼らにも相続がいつでも起こりうるということです。そうすると今度は、兄弟の妻や子がこの実家の権利を相続するため、今までであれば兄弟2人の話し合いで済んだのが、そうはいかなくなります。当事者が増え事態が深刻化することがよくあります。もし、遺言書を書く段階から、相続発生後は長男の名義にできるように定めておけば、このようなことにはなりませんでした。長男には実家を、次男には金融資産を、など指定する方法もありました。遺言書を書かれる際は、将来起こりうる問題まで見据えておくことが必要だと、私は考えています。

 しかし、そうはいっても財産らしいものは実家の家屋敷だけで、金融資産と呼べるものはほとんどないなど、様々なご事情はあるかと思います。そのようなときは、遺言書の「附言事項」と呼ばれる「こういう内容の遺言書を残すのはこういう理由だから」と自由に書ける部分を利用して、家族に当てた手紙のような遺言書にして、ご家族の理解を促すのもよい方法だと思います。

(司法書士 桑田直樹/神戸事務所)
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