相続や生前対策に関するご依頼をいただくなかで、ご依頼者の方から、「もう少し前から準備しておけばよかった」という声を聞くことがあります。
そこで今回は、代表的な生前対策をいくつかご紹介します。
遺言書
遺言とは、最期の自分の想いを残したものです。遺言書を残すことにより、相続人間の争いを未然に防げ、自分の思うように財産を分配できます。遺言書にはいくつか種類がありますが、ここでは一般的な自筆証書遺言と公正証書遺言について簡単にご紹介します
まず自筆証書遺言は、その名のごとく自分で書く遺言書のことです。費用がほとんどかからず簡単に作成できる一方、要式不備で無効になる恐れがあり、開封時に検認という家庭裁判所での手続きが必要になるこという側面もあります。ただし、法務局で遺言書を保管できるという制度もあり、その場合は検認が不要になります。
次に公正証書遺言は、公証役場で公証人に作成してもらう遺言のことです。公証人という法律の専門家が関与する最も確実な遺言であり、検認は不要です。公証役場に支払う手数料が発生します。
任意後見
任意後見とは、判断能力があるうちに判断能力が低下した場合に備えて、後見人を選んでおく制度です。
法定後見(判断能力が不十分となった後に家庭裁判所が後見人を選任する制度)とは異なり、あらかじめ契約で自分の信頼できる人に何を支援してもらうかを具体的に定めておけるため、判断能力が不十分となった後も自分の希望する暮らしが実現できます。
また、判断能力は問題なくても、身体が不自由で金融機関等に赴くことが難しい場合には、財産管理委任契約を結んでおき、判断能力低下後に任意後見に移行するという選択肢もあります。
家族信託
家族信託とは、財産の管理運用処分を家族に任せる制度です。
家族信託は基本的に委託者、受託者、受益者の3者で構成されています。委託者(財産の管理等をお願いする人)が財産を受託者(管理等をお願いされる人)に託し、受益者(利益を受ける人)のために、あらかじめ定めた目的に従って財産の管理等を行います。
家族信託では、本人の財産を守ることに重きを置く後見制度に比べ、より柔軟な取り決めが可能です。また、遺言とは異なり、二次相続以降の財産の承継先を決められるという資産承継機能があります。ただし、任意後見にはある身上監護(医療や介護に関する契約などの法律行為)機能はありません。
上記の制度はそれぞれカバーできる範囲が異なるため、併用することも可能です。
それぞれのライフステージやライフプランにあったご提案をさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
最後に、生前対策の第一歩として、エンディングノートというものもあります。ご相談にいらした際には、そちらもお渡しできますので、よければご活用ください。
(司法書士 長谷川遼/神戸事務所)