会社の登記記録(登記事項証明書)において「役員の氏名の旧姓併記」ができるようになったのが、平成27年(2015年)2月27日からです。
施行から数年経ち、旧姓が併記された登記記録を拝見する機会も増えてきました。
役員の氏名の旧姓併記の例
- 旧姓:鈴木花子が、田中さんとの婚姻により、現在の戸籍上の氏名は田中花子である場合
→【取締役 田中花子(鈴木花子)】
と登記簿に記載することができます。
令和4年(2022年)9月からの変更点
今回、令和4年(2022年)9月1日施行の商業登記規則の改正により、会社の登記において、
①併記できる「旧氏」の範囲
②旧氏の併記ができるタイミング
変更点① 併記できる「旧氏」の範囲
従前は「婚姻」に限った変更によるものしか、旧姓の表記ができませんでしたが、令和4年9月1日施行の商業登記規則の改正により、記載できる旧氏の範囲が「婚姻前の旧氏に限られない」ことになりました。
例えば、
- 旧姓:鈴木花子が、婚姻により田中花子となり、離婚して氏名は「鈴木花子」に戻した(=現在の戸籍上の氏名は「鈴木花子」)。仕事上は「田中花子」を使用していて、今後も仕事上で「田中花子」を使い続けたいような場合があると思います。
→今までは、現在の戸籍上の氏名である【取締役 鈴木花子】としか記載することができませんでした(=「離婚」による婚姻中の旧氏である「田中」は記載不可だった)が、今回の改正で【取締役 鈴木花子(田中花子)】と記載することが可能になりました。
ほかにも、
- 鈴木一郎が「養子縁組」をして、戸籍上の氏名が佐藤一郎になった場合
→【取締役 佐藤一郎(鈴木一郎)】と記載することもできます。
変更点② 併記の申請のタイミング
今までは併記の申出のタイミングが「その役員に関しての登記申請時」に限られていました。
例えば、
・会社を新規設立し、その者が役員になるとき
・その者が新しく役員に就任するとき
・その者が任期満了により再任(重任)するとき
・その者が婚姻し氏変更があったとき
の「登記申請時」にしか、併記のタイミングがありませんでした。
今回の改正により、登記申請がなくても、いつでも旧氏併記の申出ができるようになりました。
旧氏併記のメリット
令和元年(2019年)11月5日からは、住民票や印鑑証明書にも旧氏併記が可能になっており、運転免許証やマイナンバーカードの旧氏併記も普及してきたように感じます。
「通称を使って仕事をしたい」というニーズが高まっているなかで、登記記録(登記事項証明書)上、旧氏併記をすることで、通称での営業活動・銀行口座の開設(※対応は金融機関によります)がしやすくなったり、登記記録と紐づけて作成する必要がある書類(議事録など)の記載氏名を、普段仕事上で使っているものにできるというメリットが考えられます。