登記実務の専門家である司法書士でも、迷ってしまうことが多々あるのではないかと思うのがこのテーマです。不動産登記と商業登記でも取り扱いが少し異なります。
例えば、不動産登記の場合は、自然人(個人)が所有者となる氏名の文字には外国人であってもアルファベットは使用できませんが、商業登記の場合は、商号の文字にはアルファベットは使用できます。
また、不動産登記の所有者の住所や商業登記の本店の文字には、アルファベットは当然のように使用できます。これは、アパート・マンション名などの表記に使われていることがとても多く、住民基本台帳上の住所の肩書きにもアルファベットの文字は使用できますので、それと同様の取り扱いをしているのだと思います。一度、整理をしてみました。
目次
【A、商業登記における商号に使用できる文字】
日本文字のほか、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定する下記のものが使用できます。反面、( )(カッコ)やローマ数字(ⅡやⅢ等)は、使用することができません。
- ローマ字(AからZまでの大文字及びこれらの小文字)
→ ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り、当該単語の間を
空白(スペース)によって区切ることも差し支えありません。
- アラビヤ数字(0123456789)
- 次の符号
[&](アンパサンド)
[‘](アポストロフィー)
[,](カンマ)
[-](ハイフン)
[.](ピリオド)
[・](中点)
→ 上記の符号は、字句(日本文字を含む)を区切る際の符号として使用する
場合に限り用いることができ、会社の種類を表す部分を除いた商号の先頭
又は末尾に用いることはできません。
ただし、ピリオドについては、省略を表すものとして、会社の種類を表す
【B、不動産登記における登記名義人(所有者等)の氏名や名称に使用できる文字】
登記名義人が法人の場合は、商業・法人登記簿の記録どおりに登記することが可能(A、と同じ文字)ですが、個人の場合はそれとは違い、ローマ字その他の符号では登記することができず、カタカナに置き換えて登記をする必要があります。
また、苗字・名前等を分かりやすくするための空白(スペース)や[・](中点)によってもカタカナ文字の間を区切ることは原則できません。
【C、商業登記における役員の氏名に使用できる文字】
B、と同様の取り扱いです。但し、苗字・名前等を分かりやすくするために空白(スペース)や[・](中点)によって区切ることは原則可能のようです。
【D、不動産登記・商業登記における住所や本店に使用できる文字】
A、と同様の日本文字、ローマ字その他の符号で法務大臣の指定するものに加え、アラビヤ数字・ギリシャ数字・ローマ数字並びに①や②のような丸囲み数字も住民票に記載されていれば使用することが可能です。
法務局のホームページでは使用禁止とうたわれていることもありますが、原則外字扱いで登記することが可能のようです。
反面、スペース(空白)は使用することができませんので、例えば、「神戸市中央区○町○丁目1番地2 305号」という表記は「神戸市中央区○町○丁目1番地2、305号」のように「、」を挿入する取り扱いになっています。
まとめ
以上のように、考察していくと少し複雑な取り扱いになっていますので、ローマ字が原則氏名や名称にも使用できるような取り扱いに変更されれば、もっと簡潔になるのではないかと思います。
外国人の名前に、中国漢字やハングル文字が使用できないのは仕方ないにしても、ABC等のアルファベットを外国人の本名どおりに使用し、例えば「フリガナ」や「発音」を併記するような柔軟な取り扱いに変更すべきではないでしょうか。
(佐野明彦/神戸事務所)