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住宅用家屋証明書 築年数制限の撤廃

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同業の先生方や不動産関係業者の方はご存知かと思いますが、令和4年4月1日以降、中古住宅を購入する際の住宅用家屋証明書(専用住宅証明書)発行の要件が変わりました。

具体的には、現状、住宅用家屋証明書の発行を受けるためには下記の築年数要件があり、この年数を超過した建物の住宅用家屋証明書を取得しようとすると、耐震基準適合証明書や保険付保証明書を別途用意する必要がありました。

これが令和4年度の税制改正で、下記築年数要件が撤廃されることとなりました。



登録免許税の軽減適用を受けることができる築年数

 建物登記簿に記載された構造

 決済日が登記簿の建物新築年月日から

 木造、軽量鉄骨など

 20年以内(※)

 鉄骨造、鉄筋コンクリート造

 25年以内(※)


(※)耐震基準適合証明書や保険付保証明書を別途取得する場合は上記年数を超過してもよい

どこで確認できるのか

築年数制限は租税特別措置法施行令第42条1項2号に規定されておりましたが、この条項が4月1日に改正されました。

 本記事を書いている4月1日時点では、ネット上の法令検索でヒットする租税特別措置法施行令はまだ改正前のものですが、下記インターネット官報で租税特別措置法施行令の改正情報が確認できます(4月30日まで閲覧できるようです)。

https://kanpou.npb.go.jp/20220331/20220331t00037/20220331t000370171f.html

(非常に見つけづらいですが上段中程に改正条文の記載があります。官報の「官」の文字の下の辺りです)

旧租税特別措置法施行令42条1項2号

当該家屋が次に掲げる家屋の区分に応じそれぞれ次に定める要件を満たすものであること。

イ 耐火建築物(登記簿に記録された家屋の構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造その他の財務省令で定めるものである建物をいう。)である家屋 次に掲げるいずれかの要件

(1) 当該家屋がその取得の日以前二十五年以内に建築されたものであること。

(2) 当該家屋が建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること。


ロ イに規定する耐火建築物以外の家屋 次に掲げるいずれかの要件

(1) 当該家屋がその取得の日以前二十年以内に建築されたものであること。

(2) イ(2)に掲げる要件

新租税特別措置法施行令42条1項2号

 当該家屋が建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定若しくは国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること又は昭和57年1月1日以降に建築されたものであること。

具体的にいつから築年数要件が撤廃されるのか

令和4年4月1日から改正された税制が施行されますので、令和4年4月1日以降に決済を行う場合は、建築年数にかかわらず住宅用家屋証明書が取得できるようになる見込みです。


どれだけ古い建物でも住宅用家屋証明書が取得できるのか

築年数の制限を撤廃といっても、無制限に住宅用家屋証明書が取得できるようになるのではなく、昭和57年1月1日以降に建築された建物に限られます。

昭和57年1月1日以前の建物について住宅用家屋証明書の発行を受けたいのであれば、従前どおり耐震基準適合証明等が必要となります。

住宅ローン減税はどうなるのか

住宅ローン減税を受けることができる建物も同様に築年数の制限が撤廃され、昭和57年1月1日以降の建物であれば、耐震基準適合証明等が無くとも住宅ローン減税の適用を受けることができるようになりました。

具体的にどれくらい登録免許税が変わるのか検討

土地の登録免許税は住宅用家屋証明書の有無に関わらず土地評価額の1.5%ですのでここでは無視して、具体的に住宅用家屋証明書の有無でどれくらい登録免許税が変わるのかというと…

 

 建物移転登記の登録免許税率

 住宅用家屋証明書なし

 建物固定資産税評価額の2%

 住宅用家屋証明書あり

 建物固定資産税評価額の0.3%

 

上記のとおり税率の差1.7%分の登録免許税が変わります。

今回の改正の恩恵を受けるのは築20年以上の建物ですので、建物評価額はおそらくそれほど高くはないと思われますので、仮に固定資産税評価額が300万円とすると、

300万円×1.7%=5万1,000円 

5万1,000円の登録免許税の減額となります。

 

また、融資を受ける場合は抵当権設定の登録免許税にも軽減があり

 

 抵当権設定の登録免許税率

 住宅用家屋証明書なし

 融資金額の0.4%

 住宅用家屋証明書あり

 融資金額の0.1%

 

仮に3,000万円の融資を受けるのであれば、

3,000万円×0.3%=9万円  

9万円の登録免許税の減額となります。





築年数以外の住宅用家屋証明書の発行要件を再確認しておきます

①床面積

登記簿に記載された床面積が50㎡以上であること(マンションのパンフレットの面積や固定資産税の課税床面積ではありません)。

 

②建物の種類

◯「居宅」

◯「居宅・車庫」この場合車庫部分についても登録免許税の軽減が受けられます

◯ 附属建物が「物置」「車庫」など

✕「共同住宅」

✕「居宅・事務所」この場合、居宅部分のみ登録免許税の軽減適用とはなりません。居宅部分が全体の90%以上であれば建物全体で◯

 

③自己居住用のための取得

 個人が自身の居住用として不動産を取得した場合の減税措置ですので、法人名義での購入は適用外です。共同名義で不動産を購入する場合で、買主の一部のみ居住する場合は、居住する買主の取得持分のみに減税が適用されます。

自己居住を証明するため、決済前に住民票を新居に移して新住所にて登記するか、現住所にて登記する場合は下記の「現住家屋の処分方法を証する書面」及び「申立書」が必要です。

 ・現在の住まいが賃貸、社宅である→賃貸借契約書、社宅証明書など

 ・現在の住まいが持家である→現居を売却する売買契約書、媒介契約書など

 ・親族の所有する家に住んでいる→親族からの「申立書」

 

よくあるケースとして、賃貸借契約書を紛失してしまっている場合、貸主又は管理会社に事情を説明すれば賃貸借契約書のコピーを貰える場合があります。

賃貸借契約書がどうしても無いのであれば、「賃貸物件の謄本」+「光熱費の明細書」+「賃料引き落とし口座のコピー」等で代用できる場合もあります。

賃貸借契約書の賃貸期間が経過して更新されている場合は、「自動更新の定めが確認できる賃貸借契約書」又は「更新契約書」が求められます。

 

 連帯債務の場合は、連帯債務者の一人に住宅用家屋証明書が発行されていれば、住宅ローン全額の抵当権設定について登録免許税が軽減されます。


 住宅取得を促進する措置ですので、住宅ローンではない根抵当権設定には適用がありません。

まとめ

このように住宅用家屋証明書の有無で登録免許税が変わります。また登録免許税以上に住宅ローン減税の適用の可否はトータルの支払金額に大きく影響しますので、しっかりと情報収集をしたうえでできるだけ賢く住宅を購入して頂ければと思います。

 

また司法書士としては、登記費用の見積書を作成するにあたり、築20年ないし築25年を超える建物でれば、不動産業者さんに「『耐震基準適合証明書』は取得されますか?」という確認を行っていましたが、今後この確認が必要なくなるのはありがたいと思います。

(司法書士 足立浩一/東京事務所)


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