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会社実印のあれこれ

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 司法書士が登記手続きを進める過程で、必要書類に押印頂く機会が多くあります。行政の手続きでは書類への押印義務が廃止されていく中、登記実務は、まだ多くの書類で押印(ハンコ)が必要なのが現状です。

いつ・どこで・どの書類に・何の印鑑が必要なのか、をご質問頂くことも多く、司法書士の高い専門性が求められる重要な業務のひとつです。今回はハンコの中でも、会社実印について触れたいと思います。


【会社実印とは】

会社を設立するときには、商号や本店、役員、資本金等を決定していくことになりますが、会社実印をどのようなものにするかについてもご検討頂く事項の一つです。会社実印とは、会社の本店所在地を管轄する法務局に提出した届出印を指します。

「会社実印」という呼び方は正式名称ではなく、登記所届出印(令和3年1月29日法務省民商第10号法務省民事局長通達)、登記所に提出された印鑑(商業登記規則)等の記載があり、統一されていません。ただ、個人の実印と区別ができ、分かりやすいという点等から、登記実務でも「会社実印」という呼び方が一般的です。

会社実印は代表者ごとに届出をします。代表者のうちの一人が届出をしていればよく、代表者全員が届出をする義務はありません。代表者が複数いる場合、それぞれが届出をすることも出来ます。複数人が印鑑届出をするときは、同じ印鑑は使用できません。

届出をした会社実印は、商業登記の申請書(司法書士による代理申請の場合は、委任状)に押印することで、登記の真正担保の意味を持つことや、契約書等に押印した印鑑と印鑑証明書で照合することで、本人確認・意思確認に使われたり等の用途があります。


【規格(サイズや形)】

届け出をする印鑑には制限があり、辺の長さが1㎝から3㎝の正方形に収まるものでなければなりません。(商業登記規則9条3項)

形は丸でも四角でも、決まりはありません。印鑑に彫られている文字についても決まりはありませんが、会社実印の場合は、二重の円の外側に「会社の商号」を、内側に「代表者(代表取締役等)の印」とあるのが一般的です。

内側に代表者個人の名前を入れないことで、代表者を変更した際に、変更後の代表者も同じ印鑑を法務局に届け出をして、使い続けることができます。「会社の商号」を変更された際には、印鑑も新しいものを作ることが多いです。

【登録(届出)と印鑑証明書】

所定の用紙に印鑑を押印し、会社の本店所在地を管轄する法務局へ提出します。この時、届出をする代表者個人の実印も押印し、個人の印鑑証明書を添付します。届出が完了すると印鑑カードが発行され、印鑑証明書を取得出来るようになります。会社を新規で設立する際は、登記の申請と同時に上記の手続きをします。

なお、一度届出をした印鑑はいつでも変更可能です。また、会社の印鑑証明書は、本店所在地を管轄する法務局以外でも、全国どこの法務局でも取得することが出来ます。印鑑証明書を取得する際には、印鑑カードと代表者の生年月日の入力(記載)が必要です。

【会社実印のこれから】

以上の会社実印ですが、今までは、会社の本店所在地を管轄する法務局への届出が必須でした。(旧商業登記法20条)

商業登記法の改正により、同条が削除され、印鑑の届出は任意となっております。印鑑の届出をしない会社が登記申請をするときには、会社実印に対応する電子署名、印鑑証明書に対応する電子証明書が必要になります。

冒頭にも触れましたが、現在の登記実務ではまだまだハンコの出番が大変多いですが、今後マイナンバーカードの普及とともに、電子署名・電子証明書が身近になっていくことで、商業(会社)登記実務も変わっていくと思われます。

会社実印での押印と電子署名、それぞれの良さがあると思いますので、上手く使い分けがされ、登記手続きの利便性も向上すればと思います。

 

司法書士 山本裕規/大阪事務所


L&P司法書士法人