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司法書士が教える『不動産の名義変更』について

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遺産相続不動産取引などにより取得した土地や建物を、名義上でも自分のものにするために行うのが不動産の名義変更です。

しかし実際にはどのような流れで手続きを行うのか、そのためには何が必要になるのかといったことは、一般にはあまり知られていません。
いざというときに、不安を感じなくて済むよう、名義変更について知っておきたい部分をしっかり押さえて、大切な財産を守りましょう。


土地・建物など不動産における名義変更とは

土地・建物など不動産の名義変更登記とは、所有権移転登記を意味し、具体的には登記簿に記載されている情報を変更することです。

登記簿とは不動産についての様々な情報の記録簿で、法務局が管理するものです。

登記簿には、例えば土地であれば所有権が誰にあるのか、抵当権がついている場合はその内容などの権利関係のほか、面積や所在地、その用途なども明記されています。

不動産の所有権を主張するには、ただ所有しているだけではなく、登記簿に新たな所有者として登録することが必要なのです。

以前はこれらの情報は書類に記載され、それをまとめたものが登記簿謄本と呼ばれていました。
現在では情報は電子データ化され、コンピューターで管理されるようになったため、「登記事項証明書」と名前が変わっていますが、内容は同じものです。

土地や家・マンションの名義変更が必要なのはどんなとき?

不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う主な場面は、遺産相続、生前贈与、財産分与、不動産売買の4つです。

登記手続きに際してはそれぞれで必要となる書類を提出し、定められた税率に従って税金(登録免許税)を納税します。

必要となる書類のうち、登記済証または登記識別情報は、権利を取得した登記の際に法務局から発行されたもので、その他各役所で取得が必要な書類や、申請書など、自身で作成が必要な書面もあります。

遺産相続

不動産の所有者が亡くなり、その名義を変更する手続きは「相続登記」です。登録免許税の税率は固定資産評価額の0.4%となります。

相続登記で提出する書類は、相続人の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書や、亡くなった方の除籍謄本等・住民票の除票、固定資産税額がわかる評価証明書などです。

相続登記は、遺言書の有無や遺産分割協議によるかどうかで大きく3つのケースに分けられ、別途書類が必要になるものもあります。

遺言書がある

遺言書には法的な確実性を持つ「公正証書遺言」と、私的に作成された「自筆証書遺言」があり、手続きの際にはどちらかを提出します。
ただし、私的に作成された「自筆証書遺言」は家庭裁判所での検認作業を経なくてはなりません。

遺言書がない

遺言書がないときは法定相続となります。
法定相続とは、民法で規定された相続人が、民法で規定された割合によって遺産を取得する相続で、亡くなった方の配偶者や子、場合によっては兄弟姉妹や孫など、相続人が複数存在することが多いのが特徴です。

この場合、遺産分割協議書や印鑑証明書は、原則不要です。

遺産を分割相続する

遺言書がなく、かつ複数の相続人の間で法定相続に寄らず遺産を配分するための手続きが遺産分割です。

この手続きをとるためには、だれが遺産を取得するかや、相続配分の割合について、相続人全員の同意を記した「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の印鑑証明書を付けて提出することになります。

生前贈与


相続に寄らず、生きている間に不動産を贈与することを「生前贈与」と言いますが、その際の登記手続きが「贈与登記」です。


登録免許税の税率は固定資産評価額の2.0%です。登記手続きは、贈与する側と受ける側が協力して行います。
贈与する側は、登記済証または登記識別情報・印鑑証明書・固定資産評価証明書を、受ける側は住民票を用意し、互いの間で交わした贈与契約書とともに法務局に提出します。


財産分与

離婚により、それまで夫婦が協力して築き上げた財産を分配するのが「財産分与」で、登録免許税の税率は固定資産評価額の2.0%です。

現在の名義人である側は登記済証または登記識別情報・印鑑証明書・固定資産評価証明書を、新しく名義人となる側は住民票と戸籍謄本を用意します。

また離婚にあたって作成された「離婚協議書」などの提出が必要な場合もあります。

不動産売買

売買による名義変更の登録免許税の税率は固定資産評価額の2.0%です。(ただし、各種軽減措置の適用がある場合があります。)

必要な書類は、売買があったことを証する書面に加え、売主は登記済証または登記識別情報印鑑証明書固定資産評価証明書、買主は住民票です。

土地の名義変更は誰に依頼すればいい?または自分でもできる?

法務局に不動産の名義変更の申請をすることために、特に資格が必要というわけではありません。
ご自身に関する登記手続きは、ご自身で行うことができます。

しかし手続きには馴染みのない用語が多いうえ、様々な書類の作成・準備など、なにかと手間暇がかかります。

なお、不動産売買契約・取引に際しては、大きなお金が動くことから、売主・買主の双方(買主が銀行から借り入れをする場合には金融機関も)にとっての安全な取引のため、司法書士に登記を依頼することが一般的です。

また、遺産分割協議書の作成などは、専門家が間に入ることでスムーズに進み、後のトラブルを予防できることも多いのです。
そのため、書類の作成から登記申請までまとめて司法書士に依頼することが一般的です。

司法書士に依頼

司法書士へ依頼した場合、報酬の支払いは必要ですが、登記に必要な書類の取得や、申請の手続きまで代行してくれます。

必要に応じて法的なアドバイスを受けられ、わかりにくい部分があるときには説明してもらうこともできますし、市区町村役場や法務局の受付時間を気にすることも必要ありません。

司法書士は、登記を申請する際の登録免許税の軽減規定などの情報にも精通しています。

ただし、その前提条件として、信頼して任せられる司法書士を探すことが重要です。
司法書士に依頼した経験がある方に紹介をしてもらう、ホームページを確認するなど、ご自身が納得する形で判断することをお勧めします。


気を付けたいのは、司法書士の業務範囲を超えたトラブルが起きることもあるということです。
例えば、相続手続きの際に、相続人同士の意見がまとまらなかったならば、弁護士に解決を依頼ことになるかもしれません。(司法書士は、「遺産分割に関する交渉」はできません。)

もしそうなってしまった場合に、信頼できる弁護士等をスムーズに紹介してもらえるか、についても、司法書士を選ぶ際の判断材料のひとつになりえます。


自分でもできる?


不動産の名義変更は自分で行うこともできます。あらかじめ書類を用意して、登記相談の予約をした上で法務局に出向けば、その場で説明を受けながら手続きを進めることも可能です。


役所や法務局から遠方の方には、書類を郵送で取り寄せ、パソコンを使ってインターネットで手続きを行うという方法があります。

法務省のホームページには「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について」という項目が設置されており、申請用ソフトウェアとマニュアルがダウンロードできるのです。

あとは説明に従って必要な事項を記入すれば、自宅で名義変更の手続きが完結します。
自分で名義変更を行うのであれば、かかる費用は各書類の発行手数料と郵送費、税金の必要最低限で済むため、できるだけ出費を抑えたいという方には向いています。


しかし、専門家でない方は調べながら手続きを進めなければなりません。

そして書類にわずかでも不備があれば修正して再度提出となるため、多くの場合、手続きが完了するまでにかなりの手間と時間がかかってしまいます。

不動産の名義変更に法律上の期限はありませんが、できるだけ早く・滞りなく名義変更を終えたい方には、司法書士に依頼することをお勧めします。

司法書士に依頼した場合にかかる大体の費用は?

不動産の名義変更を司法書士に依頼するには、報酬を用意しなくてはなりません。
報酬額は司法書士がそれぞれ独自に設けている基準により異なり、手続きのどこまでを代行してもらうかによっても上下します。

例えば、必要なものはすべて自分で用意し、法務局への登記申請だけを依頼するのであれば、5~8万円程度を見込んでおけばよいでしょう。
ただし、各種書類の作成やアドバイスといったサポートは、別途費用が必要な場合もあります。

司法書士は、内容の相談から、各種書類の取得から協議書等の必要書類の作成など、面倒な部分や起こりがちな問題への対処を含めた料金を設定しています。

おおよその相場としては、登記手続きに加え各書類の取得を依頼するなら10~15万円程度です。

名義変更の手続きを早くスムーズに済ませたいが、出費も抑えたいという場合には、市区町村役場での書類の取得など、可能な限りのところまでは自分で行った上で司法書士に依頼しましょう。

具体的な流れと期間は?

不動産の名義変更手続きには、相続や贈与、売買などの種類があり、提出する書類などに細かな違いはあるものの、おおまかな流れは共通しています。

権利関係の確認

最初のステップは、名義を変更する不動産の状況や権利関係を確認するため、法務局から登記事項証明書を取得することです。

登記事項証明書は、不動産の状況を記載した表題部、各種の権利について記録する権利部の甲区と乙区、担保の対象となっている不動産の一覧表である共同担保目録などに分かれています。

表題部には、不動産の所在地や用途・面積・建物の構造など、その不動産の状況が記載されています。

権利部の甲区には所有権に関する情報が、乙区には抵当権など、所有権以外の権利に関する情報が記録されており、所有者の移り変わりや今まで行われた登記を知ることが可能です。

共同担保目録は、同じ担保に入っている不動産を確認するためのものになります。
例えば土地付きの一戸建てをローンで購入したというケースであれば、土地と建物がどちらも同一の担保に入っているため、土地・建物の両方がこの欄に記載されることになるのです。

固定資産評価証明書については、不動産所在地の固定資産税を管轄する税事務所で取得することができます。
これらの書類は、窓口では即日取得ができますが、郵送で取得する場合には、数日時間がかかります。

名義の変更先を確定し、書類を作成する


次に、不動産の新しい名義人となる人を確定
します。

贈与や財産分与、売買であれば相手ははっきりしており、契約書(財産分与であれば離婚協議書)を作成するだけです。
しかし、相続の場合は相続人が誰になるのか、何人いるのかを調べなくてはなりません。

そのため被相続人(不動産の所有者で亡くなった方)の除籍謄本を取得して、その方が亡くなったこととその相続人を明らかにし、さらに相続人の戸籍謄本を取り寄せて、現在生存していることを確認します。このとき、被相続人の最後の住所を証明する住民票の除票も取得しておきましょう。

その後は遺言書があればその内容に沿い、無いときは協議により遺産分割を行い、全員の同意のもとに遺産分割協議書を作成します。
戸籍謄本等の収集や協議には、事情次第で非常に時間がかかるものです。早ければ1-2週間程度で済みますが、長ければ数か月程度を要することもあります。


書類を整えて法務局に提出する

必要な書類がすべて整ったら、申請書を作成し、管轄の法務局へ提出して不動産の名義変更を申請しましょう。
登録免許税については、登記を申請する際に、申請書に収入印紙を貼付することにより納税します。
申請の審査期間は法務局の込み具合にもよりますが、不備がなければ2週間程度です。不備があった際には、申請書に記載した電話番号に、法務局から電話連絡がきます。

法務局の審査・手続きが無事に完了すると、新しく登記名義人となった人に、登記識別情報通知(権利書)が発行されます。
また、登記の完了後は、登記事項証明書を取得し、正しく名義変更が完了しているか確認するとよいでしょう。


不動産の名義変更での注意点や変更しない時のデメリットは?

特に注意したい、不動産の名義変更で起こりがちなトラブルとは


不動産の名義変更手続きにおいて注意したいことに税金の問題があります。

特に起こりがちなのが、生前贈与を行う際に発生する、贈与税についてのトラブルです。
不動産を持つ方が、遺産相続の際の相続税をできるだけ軽くしたいと考えて、生前贈与の手続きを行うことがあります。

相続税の額は、被相続人の死亡日現在での資産額に対して決定されるためです。
確かにあらかじめ贈与を行えば資産額は減るため、その分だけ相続税は軽くなりますが、生前贈与には贈与税が発生します。

しかも相続税より贈与税のほうが、税率が高いため、相続人の負担を減らすつもりで生前贈与を行った結果、逆に負担を増すことになってしまうのです。

不動産の名義変更を行わないことで発生するデメリットとは


名義変更が済んでいない不動産は、売却などの処分手続きを行うことができません。

何らかの事情により急に処分が必要になったとしても、まず名義変更から行うことになるため時間がかかることになってしまいます。

また、相続人が不動産の名義変更をしないまま亡くなってしまったということが重なると、その度に新たな相続人が増えていくことになるのです。

こうなると関係者同士の意見をまとめることが困難になり、ついにはせっかくの財産が塩漬けになってしまうということにもなりかねません。
相続登記は義務化となる見込みですので、不動産の名義変更はできるだけ早期に行いましょう。

まとめ:不動産の名義変更はできるだけ速やかに、必要であれば司法書士に依頼して行いましょう

不動産の名義変更は、様々な知識と手間暇がかかるものです。
しかし名義変更をしないままでいると、長期的には権利関係が煩雑になり、せっかくの財産を失う可能性もあります。
名義変更はご自身でも行うことができますが、手順や必要なものを調べながらの手続きは時間がかかることが多く、円滑に手続きを終えたい方にはお勧めできません。

必要であれば専門家である司法書士に依頼し、速やかに手続きを行いましょう。

不動産名義変更のご依頼は下記ご参照ください👇


監修:廣川 修子Shuko Hirokawa

プロフィール:司法書士 東京司法書士会  登録番号7967号
簡易裁判所訴訟代理 認定番号1512078号


更新日2021年6月22日

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